今回の内容は、当社で在宅勤務を8年間ほど導入してきた中での経験を踏まえた上での解説となります。
そして、これについて考えを深めれば深めるほど私の前職での経験が思い出されます。
当時、未公開でありながら大変素晴らしい企業が、株式上場し、株式上場にまで到達して社内を騒がせるほどになりながらも、なぜ、そのような素晴らしさが消えていくことにつながっていったのか?!
その理由として、まさに、メールを中心としたコミュニケーション環境も、関連していたのではないかと、思う部分があるのです。
私が新入社員として入社した頃、最初に驚いたのは、まず、会社に行っても誰もいないということでした。
実際、初めて配属されたのは、約30名の、住宅業界に特化したコンサルティング事業の部門でした。
今日から何をするのだろうと緊張しながら出社すると、誰一人いませんでした。
やがて、1名の派遣社員の女性スタッフが入社したものの、私の仕事は、上司に直接聞いてくださいと言われ、私は何をして良いか分からず、ただ机の前で待機しているだけでした。
ただ、ボイスメールはよく使うので、操作方法を良く覚えておくようにと言われ、全社員のボイスメール番号表をコピーして渡してくれました。
そういった社内ルールの理解を深めているとまだ一度も会ったことがない上司から電話があり、~の本が近くにあるので、読んで読んでおくように、という指示がありました。
そのようなことが3日間続きました。
そして、4日目になって、
「今週末に、九州の小倉で打ち合わせがあるので、直接、近くの駅まで来るように」
という指示を頂き、状況が分からないまま出張の手配をしました。
それからというものの、私にもボイスメールがどんどん届くようになってきたのです。
まだお会いしたことがない先輩のTさんからは、例えば、次のようなボイスメールが入ります。
「お疲れ様です、Tです。このメッセージは、木下さん宛に、CC:で中山さん宛に入れています。
今週末の小倉でのミーティングの準備方法について、ご相談させてください。
準備資料として考えているのは、~と~です。
もし、他に必要でしたら、ご指導の程、宜しくお願い致します。
中山さん、はじめまして。準備について協力をお願いする場合があるかと思いますが、その際には、ボイスメールでご連絡します。」
そして、このようなメッセージが届いた後、数時間ほどすると、今度は、上司から、このようなボイスメールが入ることになります。
「お疲れ様です。Kです。Tさんと中山さん宛にご連絡します。
Tさん、メッセージ確認しました。特に問題ありませんので、このまま進めてください。
その中でも、2つめの資料については、中山さんに入力をお願いします。
完成後はメールで私とTさんに送付してください。
分からないことがあったら、Tさんに直接相談ください。」
このようなボイスメールを通じて、事前の準備を進めていきました。
誤解がないように言うと、当時は、全社員がノートパソコンと携帯電話を保有し(全員、自前の購入です…笑)、メールでも携帯電話もつながる環境にありました。
ところが、コミュニケーションの大半が上記のようにボイスメールを通じて行われていたのです。
ちなみに、ボイスメールとは、携帯電話からボイスメールのサーバに電話をかけ、そこで、自分宛の録音メッセージがないかを確認したり、そこから、ボイスメールを吹き込んだりします。
留守電みたいなものですから、留守電にメッセージを吹き込めば良いのではないかという話も出てきそうです。
ところが、それはあくまで1対1のものにすぎず、チームでのコミュニケーションとは言えません。
一方で、メールだと、1対1ではなく、TO:やCC:を増やしたりすることで、チームでのやりとりができます。
それが、電話だとできません。
それを、電話でもできるようにしたのがボイスメールです。
そして、これを当時活用していて実感していたのが、いつも、ほとんどの社員が出社せずに、ばらばらなところで仕事をしているのに、このボイスメールによって、「あたかも近くにいるようなつながり」を感じることができていた、ということなのです。
上場をしてからは、会社としての効率が求められるような風潮も生まれてきました。
そして、このボイスメールに対しても、留守電で異たりるのではないかという声も増え、廃止されることになりました。
すると、今は、~さんはカレンダーを見ると面談中だから、その最中に携帯に電話をかけて留守電にメッセージを入れるのは、申し訳無いという気持ちが増えてきます。
代わりに、メールで連絡するようになります。
また、留守電に入れるにしても、同時に1人の人にしか入れられません。
本当はこの人にも連絡しておいた方が良いことは分かっているけれど、もう1回、同じことを言うのは、なかなか大変です。
そうすることで、どんどん、直接の声を通じた、情報共有量が減っていきました。
代わりに、激増していったのが、メールでのコミュニケーションです。
そして、この頃から、上場後の戦略として、各事業の経験者が、中途採用として、即戦力として期待されつつ、入社してくることが増えてきました。
以前であれば、自然に、当たり前であるかのように引き継がれてきたDNAが、引き継がれなくなってきているのではないかと個人的にとても心配になってきたのもこの頃です。
そんな中でも、皆、出社することはあまりない中で、それらの方々の仕事をすることになります。
メールで伝えることができることには限界があるため、意思疎通が十分にできずにギクシャクするケースも増えてきました。
結果、これがどんどん加速し、組織として空中分解していき、上場廃止という流れにつながっていくことになります。
その要因は、戦略やビジネスモデルを含め様々な要因があるのは確かです。
が、その中でも、私として、最も注目したいと考えているのが、DNAが引き継がれなくなったことや、DNAを引き継ぐための、メール以外のコミュニケーション環境にあるのではないかとも考えているところです。
日本では、「文」の文化が大切にされています。
携帯メールや、facebookやLINE、チャット等が携帯電話での通話以上に活用されている現在は、まさにその日本文化の顕れではないかと感じられるほどです。
当社でも、在宅勤務を始めてから8年間、メールやチャットでのコミュニケーションを軸にし、それは、それで機能してきたのは事実です。
ただ、昨年後半以降は、特に、仮にそれが上手くいっているように見えたとしても、「メール・文字だからこそ伝えられること」と、「 メールだけでは伝えられない限界」の両方に目を向けていく必要があると考えているところです。
これは、在宅勤務を導入している方だけではなく、コラボという形で、社外の方と共にプロジェクトを進めている方にも、共通するものがあると考えられます。
今月の定例講義(中上級編)の中では、まさに、そういったことを加味した上で、どんなコミュニケーション方法をとっていけば良いのかについて解説しました。
その音声やテキストは以下をご覧頂けたらと思います。
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