好きになる努力
「この分野、確かに市場性もあるし、強みも活かせるし、いけると思うんですよね。でも、どうも興味が持てないんですよ」
先日、クライアントのTさんからこんな相談を受けました。
それまで、3ヶ月間かけて、Tさんの強みも活かせ、しかも、どう考えてもこれから明らかに成長するマーケットを見付けて、いよいよこれから、実行に移していこうとする矢先のことでした。
もし、あなたが、Tさんと同様に、成功可能性があり、何よりも世の中の新しい創造につながっていく可能性があるにも関わらず、興味・関心が持てないとした場合、それを実行されるでしょうか?
これについては、私自身も経験したことがありますので、お話したいと思います。
私が、前職で、住宅業界に特化したコンサルティングご支援活動をしていたときのことです。
ある優れた「地盤補強」「地盤改良」の技術をお持ちの企業がいらっしゃるということで、私も担当することに
なりました。
「地盤補強」とは、地震などが起こった際に、建物が傾かないように建物の下に、例えば、杭などを打つような施工のことです。
早速、どんな技術なのかを見学しに行きましたが、正直申し上げて、全くといっていいほど興味が持てませんでした。なぜならば、施工した後の姿を、全く見ることができないからです。
それまでやっていた「住宅」でしたら、「ああ、立派な建物が建ったな〜!」と感銘を受けるものです。
しかし、はい、地盤補強が完了しました〜、と言われて、その様子を見ると、ただそこに地面があるだけなのです。
施工する前も、地面があるだけ。施工後も、そこに地面があるだけ。一体、何をやったのですか?
私は、この事業に対して、そんな風に全くといっていいほど、興味が持てなかったのです。
しかし、そのクライアントさんを単にコンサルティングという形でご支援をするだけではなく、全国展開のためのありとあらゆる活動をアウトソーシングすることにもなりました。
言ってみれば、私がその会社の社員のような形で、実務まで含めて行っていくようなことになります。
まさに、「勘弁してくれよ…」というような思いでした。
しかし、任せられた仕事ですので、やらないわけにはいきません。
ということで、それまで全くと言っていいほど知らなかった「建設業界」について、理解を深めていきました。
特に、「地盤補強」については、今までどんな方法があって、どんな問題や課題があるのか? そもそも、そのクライアントさんの新しい技術がなぜ求められているのかといったことを、学んでいきました。
すると、とんでもないことが分かっていったのです。
かなり、衝撃を受けたのは、「地盤補強」「地盤改良」といった施工をする過程では、国が定めている基準を超えるほどの有害物質が発生するようなケースもあるということでした。
そういった施工の中には、結構、安いものも多く、一般の住宅の「地盤改良」をする際にも使われているとのことです。お施主さんも地盤にお金をかけたくない方も多く、住宅会社もそういった安いものを薦めていることが多いという事実も知りました。
築地の市場が、豊洲市場に移転する際にも土壌の有害物質がかなり問題になったほどです。小さなお子さんがいるご過程の家の下がそんな状態になって良いわけがありません。
結果として、私はこの新しい技術を広めるために、いろんな企業を訪問する際に、いつしか、そういった問題に対して熱く語り、一緒に社会を良くしていきましょうと理念を語るようにまでなっていました。
そして、そうなる頃には、その「地盤改良」をするための新しい施工機械に対して、「いとおしさ」さえも覚えるようになっていったのです!
まさに、この機械が「かわいくてたたまらない!」といった感じで、なでなでしたくなるようなイメージです。
好きになるための努力?!
なぜ、私は最初は全く興味が持てなかったのに、そんな「いとおしさ」まで感じるようになったのでしょうか?
それは、その「地盤補強」という分野を好きになるための努力をしたからです。
どんな分野であったとしても、それが今後の社会に求められているものお客さんに求められているものであれば、素晴らしい活動であるわけです。
それなのに、なぜ、興味を持てないのかというと、それが。なぜ社会が必要としているのか、お客さんが求めているのかという事実を知らないからです。
もし、知ってしまえば、きっとどんな分野であったとしても、好きになり、興味が湧いてくるのではないでしょうか?!
好きなことで起業したいと思う人はいっぱいると思います。それで、成功したクライアントさんもたくさん知っています。しかし、それは、好きなことで起業しようとした人の中での、ほんの一握りしかいません。
それよりは、うまくいく可能性があり、世の中のためになる分野で事業を起こす方が余程良いと考えています。
しかし、そういうものは、うまくいくよと言われても、興味を持てないもの…。そこで、そうしたものを「好きになる」ための努力をしていくことがとても大切なのではないかと考えています。
恋愛においても、第一印象が悪く、大っ嫌いだと思った人であっても、接しているうちに、良いところが見えてきて、やがて好きになってしまうことがあります。(私の大学時代の友人の1人もそうでした。)
逆に、最初は大好きだった人が、やがては、大っ嫌いになることも多いものです。
起業においても、これは全く一緒だと感じます。好きなことで起業したけれど、結局、その分野が大嫌いになって
続けられなくなってしまった人もたくさんいます。(こうした例は、マイケル・E・ガーバーの書籍でも採り上げられています。)
一方で、私もそうだったわけですが、最初は、大嫌いだと思った分野が、大好きになることも多いのです。
成功可能性がある分野をみつけたら、ぜひ、その分野を好きになる努力をしていくことができたら良いですね。